昨年6月にドコモからアナウンスがあった「『ぷらら』および『BUSINESSぷらら』の一部オプションサービス等の提供終了について」ですが、その中でも色々と困っているのがホスティングサービスではないでしょうか?
これまでに実に多くのプロバイダー系のホスティングサービスが終了してきました。地方のプロバイダーでは軒並み終了しています。
どうしてプロバイダー系のホームページサービスが終了していくのか?
プロバイダー系のホームページサービスが終了していく背景には、いくつかの社会的・技術的要因が関係しています。僕自身も1997年に初めてホームページを作成したときは利用していたプロバイダーのOCNが提供するホームページサービスを利用していました。無料で利用出来て当時はレンタルサーバーというととてもハードルが高く感じられて、ホームページ初心者にはもってこいのサービスだったと思います。
ホームページサービスの利用者の減少
しかしその後、ブログサービス(はてなブログやAmebaブログなど)やSNS(Twitter、Instagram、Facebook)が広がり、個人が情報を発信する手段が多様化しました。ホームページ作成についてもJimdo、Wix、ペライチなど知識が無くてもそれなりのホームページが無料で出来るサービスがいくつも提供されるようになってきました。これらのサービスは簡単な操作で利用でき、特別な技術や知識を必要としないため、プロバイダー系サービスの需要が減少しました。
また、一方で、企業やビジネス用途ではWordPressのようにより高機能でデザイン性の高いツールが登場したため、プロバイダー提供のシンプルなホームページサービスが淘汰されていったと考えられます。
ホスティングサービスの運用コストの増大
現代のウェブサイト運営では、セキュリティの確保が非常に重要です。HTTPS対応や不正アクセス対策、システムアップデートなど、これらの対応には多大なコストとリソースがかかります。プロバイダー提供サービスでは十分な対応が難しく、リスクを軽減するために終了を選択するケースが増えています。
モバイルフレンドリーなデザインやレスポンシブ対応など、現代のウェブ開発のトレンドに追従するためのシステム更新が必要です。しかし、これを維持するための投資が採算に合わなくなっているのが現実です。
ホスティングサービスの収益性の低下
かつてはインターネット回線契約とセットでホームページサービスを提供するモデルが一般的でしたが、現在は回線契約そのものがプロバイダーの収益源となっています。結果として、利用者の少ないホームページサービスの収益性が低下し、維持が困難になっています。
また、レンタルサーバー市場やクラウドサービス市場では競争が激化し、低価格で高機能なサービスが登場しています。これにより、プロバイダー系サービスの競争力が低下しました。特に現在はWordPressでサイトを構築することが一般的となっており、WordPressに特化したレンタルサーバーが登場している中で利用者を増やし収益性を高めることは困難と言えるでしょう。
ホームページ制作の技術トレンドの変化
かつては多くのプロバイダーサービスでは、HTMLやCSSの基本的な知識が必要でした。ローカル環境で作成したコンテンツをFTPソフトやプロバイダー提供のファイルマネージャーを活用してアップロードするというのが一般的でした。
しかしクラウドベースのホームページ作成ツールやWordPressのようなCMSが一般的になり、プロバイダー系のサービスが時代遅れになっていると感じられます。これにより、ユーザーはより高度で柔軟なサービスを選ぶ傾向があります。
これらの理由を踏まえると、プロバイダー系サービスの終了は必然的な流れであり、プロバイダー系のホームページサービスを利用してきたユーザーは変化を受け入れつつ新しい技術に順応していく必要があります。
プロバイダー系のホームページサービス終了後の選択肢は?
プロバイダー提供のホームページから移行する際の選択肢について、それぞれのメリットとデメリットを以下にまとめます。
Facebook、InstagramなどのSNS
メリット
- 無料で利用可能: 初期費用や維持費がかからない。
- 操作が簡単: 投稿や写真のアップロードが容易で専門知識が不要。
- 多くのユーザーとの接点: プラットフォーム自体に多くのユーザーがいるため、情報発信やフォロワーとの交流がしやすい。
- 即時性が高い: 投稿がリアルタイムで反映され、最新情報を簡単に共有できる。
デメリット
- デザインや機能のカスタマイズ性が低い: レイアウトやデザインは限られており、独自性を出しにくい。
- 検索エンジンでの表示が弱い: SNS内での検索は強いが、Googleなどの検索エンジンでの露出は弱い。
- プラットフォーム依存: サービス停止や仕様変更のリスクがある。
Amebloなどの無料ブログサービス
メリット
- 無料または低コストで利用可能。
- 初心者向けの簡単な操作性: デザインのカスタマイズがある程度可能。
- アメーバ内の集客力: アメブロの利用者同士での相互閲覧やコメント交流が活発。
デメリット
- 広告が表示される: 無料プランでは強制的に広告が入る場合が多い。
- 独自ドメインが使えない(または有料オプション): URLが「ameblo.jp/~」になるため、ブランドとしての一貫性を保ちにくい。
- SEOが弱い: Google検索での優先度が低め。
Wix、Jimdo、ペライチなどの無料ホームページ作成サービス
メリット
- ドラッグ&ドロップで直感的に作成可能。
- 無料プランでも機能豊富: サービスによってはフォーム作成や簡単なEC機能がある。
- 専用サーバー不要: 技術知識がなくてもスタイリッシュなサイトが簡単に作れる。
デメリット
- 無料プランでは独自ドメインが使えない: URLが「wix.com/~」のような形になる。
- カスタマイズの自由度が限られる: テンプレートを大きく変更するのは難しい。
- 費用が割高になることも: 高機能を求めると有料プランでの月額コストが高くなる場合がある。
レンタルサーバーを契約し、独自ドメインでWordPressを使う
メリット
- 完全な自由度: デザインや機能を自由にカスタマイズ可能。プラグインで機能を無限に追加できる。
- SEOに強い: 独自ドメインを使うことで検索エンジンでの評価が高くなりやすい。
- 独自ドメインの利用: 信頼性やブランド力が高まり、他者と差別化できる。
- 所有権が自分にある: サーバーやドメインは自分のものなので、プラットフォーム変更やサービス停止のリスクが低い。
デメリット
- 初期費用と運用コストがかかる: レンタルサーバー費用やドメイン取得費用が必要。
- 専門知識が必要: WordPressのインストールやカスタマイズにはある程度のスキルが求められる。
- セキュリティ対策が必要: 自分で管理するため、定期的な更新やバックアップが必要。
独自ドメインの重要性とその理由
独自ドメイン(例: example.com)を利用することには、多くのメリットがあり、特にビジネスや長期運営を考える際に欠かせない要素です。以下にその重要性と理由を詳しく解説します。
ブランドの信頼性を向上
独自ドメインを利用すると、ウェブサイトに「公式感」を持たせることができ、訪問者からの信頼度が大幅に向上します。例えば、無料ドメインを利用している場合(例: ameblo.jp/~やwix.com/~)、個人や趣味で運営している印象を与えがちです。一方、独自ドメインを利用することで、プロフェッショナルな印象を与え、ビジネス用途での信頼性が格段に高まります。
さらに、企業やブランドの名前をそのままドメインに反映させることで、ブランドイメージの統一が図れます。ドメイン名は名刺や広告に掲載されることも多いため、簡潔で覚えやすい独自ドメインを持つことは、マーケティング面でも重要な役割を果たします。
検索エンジン最適化(SEO)に有利
独自ドメインは、SEO(検索エンジン最適化)の観点でも非常に有利です。Googleやその他の検索エンジンは、独自ドメインを持つサイトを信頼性の高いサイトとして評価しやすい傾向があります。そのため、独自ドメインを使用することで検索エンジンのランキングが向上し、結果としてウェブサイトへの訪問者数が増加する可能性があります。
また、独自ドメインを利用している場合、特定のキーワードを含めたドメイン名を選ぶことで、検索エンジンの結果においてさらに目立ちやすくなる効果があります。例えば、「名古屋寿司.com」のようなドメイン名は、寿司や名古屋に関する検索クエリと親和性が高く、ローカルSEO対策としても有効です。
移行や変更の自由度
独自ドメインの最大の特徴の一つが、その「移行や変更の自由度」です。プロバイダー提供のサービスや無料ブログでは、サービス終了や仕様変更の際にURLが変更されるリスクがあります。その結果、過去に設定されたリンクやSEO評価が無効になってしまうことがあります。
しかし、独自ドメインを利用していれば、プラットフォームを変更してもドメイン名は変わらないため、過去に蓄積したSEOの評価や外部からのリンクをそのまま維持することができます。たとえば、無料サービスからWordPressなどの独自サーバー環境に移行する際にも、訪問者に対して一貫したアクセス体験を提供することが可能です。
ビジネスの資産化
独自ドメインは単なるウェブサイトのアドレス以上に、ビジネスの重要な資産として機能します。特に長期的に運営する場合、独自ドメインの価値は時間とともに高まります。例えば、検索エンジンでの評価が蓄積されることで、信頼性が増し、顧客や取引先からの信用も向上します。
さらに、独自ドメインを活用してメールアドレスを設定すること(例: info@example.com)も可能で、これにより一貫したブランドイメージを維持することができます。顧客や取引先から見た際に、無料メールサービス(例: GmailやYahooメール)を使うよりも、プロフェッショナルな印象を与えやすくなります。
また、ビジネスを売却する際や他社と提携する際に、独自ドメインを持つことはそのビジネスの価値を高める要因になります。独自ドメインが持つ信頼性や知名度が高ければ、それ自体がブランド資産として評価されるケースも多いです。
顧客との信頼関係の構築
ウェブサイトを訪れるユーザーにとって、ドメイン名はそのサイトが信頼できるかどうかを判断する一つの基準となります。例えば、example.comのような独自ドメインを持つサイトは、無料ドメインを利用しているサイトと比べて「正式な運営元がある」と感じられやすくなります。
特に、オンラインショップや予約受付サイトの場合、信頼性は売上や利用率に直接的に影響します。独自ドメインを使用することで、顧客が「このサイトなら安心して利用できる」と感じやすくなり、結果としてコンバージョン率の向上が期待できます。
独自ドメインを利用することは、信頼性の向上、SEO効果、移行の自由度、ビジネスの資産化といった多くのメリットをもたらします。また、特に長期的にウェブサイトを運営したい場合や、ビジネス用途で利用する場合には、その重要性がさらに高まります。初期費用や年間の維持費が発生するものの、それ以上の価値を生み出すため、ウェブサイト運営を本格的に考えている方には強くおすすめできる選択肢です。
これらの理由から、独自ドメインはウェブサイト運営の中で欠かせない要素であり、信頼性やブランド価値を高めたい方にとって必須の投資と言えるでしょう。
プロバイダー系のホームページサービス終了後の選択肢のまとめ
選択肢 | メリット | デメリット |
---|---|---|
SNS | 無料、操作簡単、即時性、ユーザーとの交流がしやすい | カスタマイズ性が低い、プラットフォーム依存、検索エンジンでの露出が弱い |
無料ブログ | 無料または低コスト、操作簡単、集客力がある | 広告が表示される、独自ドメインが使えない場合が多い、SEOが弱い |
無料ホームページ作成ツール | ドラッグ&ドロップで作成、機能豊富、専門知識不要 | 無料プランの制約が多い、カスタマイズ自由度が低い、コストが高くなる可能性 |
レンタルサーバー+独自ドメイン | 自由度が高い、SEOに強い、ブランド力向上、所有権が自分にある | 初期費用と運用コストがかかる、専門知識が必要、セキュリティ管理が必要 |
独自ドメインを利用することで、信頼性や自由度、SEO効果など、多くの利点を享受できます。特に長期的にウェブサイトを運用したい場合は、レンタルサーバーを利用して独自ドメインで構築する方法がおすすめです。
まとめ
間もなく終了するぷららのホームページサービスを含め、多くのプロバイダー系ホームページサービスが廃止される中で、私たちは新しい選択肢を模索する時代に突入しています。かつては初心者にとって手軽で便利だったプロバイダーサービスも、技術の進化と市場の変化により役目を終えつつあります。しかし、それに代わるツールやサービスが数多く存在する現在、適切な移行先を選ぶことで、より効果的な情報発信やサイト運営が可能になります。
特に、独自ドメインを利用することで得られる信頼性やSEO効果は、長期的な運営を考える上で大きな価値を持ちます。また、SNSや無料ブログ、無料ホームページ作成ツールなど、簡便性を重視した選択肢も豊富です。一方で、レンタルサーバーを契約してWordPressで運用する場合には、自由度の高さと引き換えに専門知識やコストが必要ですが、ビジネス用途やブランディングには最適です。
重要なのは、自分の目的や必要性に合った選択をすることです。時代の変化を受け入れ、技術の進化をうまく活用すれば、これまで以上に効果的で魅力的なウェブサイトを運営できるでしょう。今回のサービス終了を機に、より良い未来への一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。